孫悟空にはなれない

連絡先:satsu24855759@gmail.com

元旦の日の出来事

元旦、お昼まで寝ている恋人を叩き起こし、おそらくどこも休みであろう町にご飯を食べに出かけた。

ある交差点をわたっていると、私の目に珍しい光景が飛び込んできた。所謂ホームレスと呼ばれる人が、こちらを向いて下半身を露わにしているのである。私は驚いたが信じられない光景なので思わず二度見して確認したが、やはり確実に出ていた。見てはいけなかったと思い「あ、やばい」と言って隣を歩く恋人にも伝えると「あ、ああ」と言っていた。

とにかくその場を立ち去りたくて早歩きで歩いた。出来ればその出来事もその画も忘れてしまいたかった。でもその場面だけ切れ取られたように強烈で頭から離れない。しばらく無言で歩いた後、恋人が口を開き「でもまああの人を責める事はできない。社会的に悲惨な境遇にあったらちんちんを出すことに抵抗がなくなるかもしれないし、精神を「病んで」いる人かもしれない。もしあの人が社会的地位があるおじさんとかなら僕も怒るけれど」と言った。初めはまあそうかなとも思ったが、すでに気分が悪くなっていた私は「でも食欲は減退した…男だからできる事だよね」と言った。

 


知らない人のちんちんをいきなり見せられた後に、いきなりステーキが食べれるほど私はタフではなかった。

 


恋人からは帰ることも提案されたが、せっかく出て来たのに最悪な気分で帰りたくなかった私は帰らないと答えた。

その後、店を探したが行きたい店が元旦から開いている訳もなく、迷ってしまい迷う私に恋人もイラついてきてもうこの事について話すのはよそうと言って家に帰ることとなった。

 


家に帰ってもずっと悶々としていた。次の日から実家に帰ったが、実家にいる間もその事だけを考えていた。

 


何が引っかかっていたのかと言うと、恋人が私の心配よりも先にちんちんを出していた人を擁護する発言をしたからである。今までちんこ野郎ではないからと信頼してきた恋人がちんこの擁護に回ったことが非常にもやもやした。この人は自分の子供が同じ目にあった時にもちんこの味方をするのか?相手が日雇い労働者とか社会的に抑圧を受けている人ならどんな仕業でも擁護するのか?もしその場合、そんな奴の子供は産めないからこれからはコンドームを絶対付けるようにしようと思った。

ただ、後にこのことについて恋人に聞いたところ、私がそこまでショックを受けていたとは感じなかったとのことだったので、私のウルトラ妄想早とちりである。その場でうわあああと叫んだりとか倒れ込んだら伝わったかもしれないけど。

確かに私は直後はどうしていいかわからずとにかく気丈に振る舞おうと思った。ご飯を食べて日常に戻ろうと思った。でも、本当は自分が思う以上にショックを受けていた。高校生の時に私個人を狙った露出狂に会ったことがあるがその時の恐怖もフラッシュバックした。

よくよく考えると、普通に振舞っていたのだから恋人を責める事は出来ない。また恋人が「ちんちんを出しても責められない」と言ったのは、ちんちん露出の禁止は社会的に作り出されたもので、かつその人に「見せつける」意志が確認できなかったことやその人の悲惨の可能性を前に軽々しく批判は出来ないという理由からだったようだ。その恋人のスタンスは私もなんとなくわかっていたのでそれはいい。

だから今回はもし出来れば私自身が声をかけるべきだったのだとは思う。「隠してください」とかなんとか。でもその時は怖くてその場をすぐにでも立ち去りたくて出来なかった。もし追いかけられたらどうしよう?なんか言われたらどうしよう?女がちんちんを出してる人にやめろと言うのは簡単な事?逆上されたらどうする?このことも恋人に言ったらそういう場合は僕に言ってくれと言われたので今後はそうしようと思う。

 


また今回すごく思ったのは、ちんちんは凶器だという事。私にとって知らない人にいきなりちんちんを見せられるという事は、ナイフや銃をちらつかせる事と同じくらい怖い。恋人はちんちんは身体の一部だし別に見せても問題ではないと言ってたけど、それはどうかなと思う。これについてはまたよく考えたい。

 


今回は私個人を狙っていたわけでもなくどちらかと言えば不特定多数向けと言うか、ただの日光浴だったのかもしれないと今は思うが、この事は恐怖だったし鮮明な記憶を忘れたくないから残す事にした。